COLUMNコラム

断熱リノベーションの費用や補助金、コストを抑えるコツを解説

「家の中が冬は寒くて夏は暑くて大変。光熱費も上がって困っている」
「断熱リノベーションで暮らしやすくなると聞いたけれどどんな効果があるの?費用は?」

このようにお悩みではないでしょうか?

健康的で快適な日常を送るために室内環境は非常に重要な役割を担います。

そこで本記事では、断熱リノベーションを検討すべきケースやその効果・メリットと合わせて、方法や費用相場、費用を抑えるコツを解説します。

快適な住環境の実現や光熱費の節約など多くの利点がある断熱リノベーションをご検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。


目次

1.断熱リノベーションを検討すべきケースとは?

室内と外との気温差が気になる夏場や冬場に次のような問題が発生している場合は、断熱リノベーションの実施を検討するのをおすすめします。

・冷房が効きづらい
・窓際や壁、天井から熱気が来る
・夜も熱気を感じる
・暖房が効きづらい
・浴室や洗面所、トイレが寒い
・窓際やドア付近が寒い
・窓や壁に結露ができる

建物の断熱効果が低いと、室温への外気の影響が大きくなるだけでなく、冷暖房の効きが悪くなり心身に負担がかかる上に光熱費の負担も大きくなってしまいます。

また、冬場は暖房の効いた部屋と浴室や洗面所やトイレの気温差によるヒートショックのリスクも高くなって危険です。

建物の断熱性能を高める断熱リノベーションを実施すれば、上記の悩みを根本から効率的に解消できるだけでなく、健康的で快適な住環境の実現にもつながります。

2.断熱リノベーションの5つの効果・メリット

ここでは、断熱リノベーションをすることで得られるメリット・効果について説明します。

・快適性の向上
・光熱費の削減
・結露防止
・資産価値の向上
・防音効果の向上

(1)快適性の向上

断熱リノベーションを実施することで、室温が外気の影響を受けにくくなり、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるようになります。

また、室温の急激な変化を防ぐことで温度差によるストレスも減り、冬場のヒートショックのような寒暖差による健康リスクも低減できます。

(2)光熱費の削減

断熱リノベーションをすることにより光熱費も大幅に削減できます。

外気と室内の間にしっかりと断熱層を設けることで、外の気温に左右されにくい快適な室内環境が保てます。

さらに冷暖房の効率も高まるため、冷暖房機器の使用頻度やエネルギー消費が抑えられ、光熱費の節約も実現できます。

(3)結露防止

断熱リノベーションは、結露の発生を抑えるうえでも効果的です。

窓や壁の断熱性が低いと外気との温度差が大きくなり、結露が発生しやすくなります。

結露は見た目の問題にとどまらず、2つの大きなリスクを伴います。

まず、湿気が原因でカビが発生しやすくなり、そのカビを餌とするダニも増加することで、アレルギーや喘息、過敏性肺炎など健康への悪影響が懸念されます。

次に、結露による水分が建材に浸透すると腐食や劣化を引き起こし、住宅の構造や耐久性に深刻なダメージを与える可能性があります。

こうした結露による二次トラブルを防ぐには、建物全体の断熱性能を高めることが非常に有効です。

(4)資産価値の向上

断熱リノベーションで建物の資産価値向上を図ることができます。

断熱がしっかりしている建物は快適性に優れているだけでなく、冷暖房効率が高くて光熱費も抑えられる上に環境負荷も低いことから、「住宅性能評価制度」における評価も高くなります。

・建築物省エネルギー性能表示制度(BELS):★〜★★★★★で断熱・省エネ性能を評価
・断熱等級(等級1〜7):等級5以上は「高断熱住宅」
・長期優良住宅:高耐久・高断熱で資産評価・税制優遇に有利
・ZEH( Zero Energy House/ゼッチ):エネルギー収支ゼロに近い住宅

高評価の建物は住みやすさ・快適性が向上するだけでなく、将来の売却・賃貸でも有利になります。

また、省エネ基準を満たすことで各種補助金や住宅ローン控除・減税制度の対象となる場合もあり、経済的メリットも大きくなります。

(5)防音効果の向上

断熱リノベーションにより、副次的効果として防音効果アップというメリットもあります。

断熱材は熱を遮るだけでなく、断熱材の吸音性能や建物の密閉性向上によって音を遮る効果も期待できます。

重低音・衝撃音などの振動を伴う音の防音には専用の防音材が必要となりますが、日常会話やテレビの音などの生活音や、外の車の走行音や雨風の音、人の話し声などは小さくなるケースが多いです。

断熱材の種類 防音効果特徴
グラスウール/ロックウール吸音性・遮音性あり。住宅でよく使われる
吹付けウレタンフォーム発泡系のため密閉性はあるが、防音性はそれほど高くない
セルロースファイバー吸音性・密度ともに高い

また二重窓や内窓にも音漏れを防ぐ効果があります。

車や人通りの多い道路に面していたり、学校や施設などが近いなど建物の場所によっては断熱リノベーションで音の面でも暮らしやすくなるケースも少なくありません。

3.断熱リノベーションの部位別方法と工期、費用相場

次に部位別に断熱リノベーションの方法や工期、費用相場を解説していきます。

断熱工事の内容や費用感が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。

・壁
・天井
・床・窓・ドア
・外壁
・屋根

(1)壁

壁の断熱リノベーションは、外壁と内壁の間にグラスウールや吹付ウレタンフォーム、硬質ウレタンボードなどの断熱材を入れる方法(内断熱)が一般的です。

まず室内の壁を剥がしてから内側に断熱材を敷き詰めるため、元に戻す工程も含めて工期は2週間~1ヶ月ほど必要です。

施工面積によって変動しますが費用相場はおおよそ80~350万円程度となります。

壁の断熱リノベーションには、内断熱のほかに、外壁の外側に硬質ウレタンフォーム、フェノールフォームなどの断熱材を貼り、その上に仕上げ材(サイディングなど)を施工する方法(外断熱)もあります。

壁を剥がす必要がなく、熱橋(ヒートブリッジ)を防いで高い断熱効果を発揮しますが、内断熱と比較すると費用が倍ほどになり、工期も長くなります。

(2)天井裏

天井から外気温を感じる場合は天井裏の断熱リノベーションが効果的です。

グラスウールやロックウール、セルロースファイバーなどの断熱材を天井の上部(小屋裏や屋根裏)に敷く方法(天井断熱)と、屋根裏がない住宅に適した天井材の裏側に断熱材を貼り付けて石膏ボードや天井材で仕上げる方法(天井内断熱)があります。

天井裏の断熱リノベーションの費用相場や工期は施工面積や建物状態によって変動しますが、約18畳程度の天井断熱であれば8~16万円程度が相場であり、工期も2~4日と短期でできます。

既存の天井材を撤去して断熱材を入れたり、天井の下に断熱層を増設する天井内断熱は施工手間が多いことから天井断熱より費用や工期がかかります。

約18畳程度の費用相場は30~50万円程度、工期は約3〜5日程度となります。

(3)床

フローリングや畳など足元からくる冷えには、床下に発泡ウレタンやフェノールフォーム、ポリスチレンフォームなどの断熱材を入れる断熱リノベーションが有効です。

床下から断熱材を設置する方法(床下工法)と、床の上を剥がして断熱材を設置する方法(床上工法)があります。

費用相場は、既存の床を壊さずに施工できる床下工法は10万~30万円、床上工法は70万~110万円程度となり、床下工法の工期は2日程度、床上工法の工期は3~6日程度です。

非常に寒い地域の場合は、床の断熱リノベーションと合わせて床暖房の設置も検討するのがおすすめです。

(4)窓・ドア

窓やドアなどの開口部に施工する断熱リノベーションも高い断熱効果が期待できるのでおすすめです。

冷房時は約7割の熱が窓から入り、冬の暖房時は約6割の熱が逃げていくといわれており、断熱効果を高めるには窓やドアなどの開口部の対策をまず行うことが効果的です。(出典:広報東京

窓の断熱リノベーションとして複層ガラスやサッシの変更、内窓の設置が有効です。

#1:複層ガラス

複層ガラス(ペアガラス)とは、2枚以上のガラスの間に空気層やガス層を挟んで作られたガラスで、ガラスとガラスの間に空間があるため断熱性や防音性に優れ、結露の防止にも効果的です。

複層ガラスにはいくつか種類・グレードがあります。

・一般複層ガラス:ガラスとガラスの間に空気の層を入れたガラス
・Low-E複層ガラス:外側もしくは内側にLow-E金属膜をコーティングしたガラス
・ガス入り複層ガラス:中空層に空気より断熱性が高いアルゴンガスが入ったガラス

「一般複層ガラス < 断熱複層ガラス < ガス入り複層ガラス」の順に断熱・遮熱・防音性能が高くなり、値段も高くなります。

W900×H900mmの窓を例に挙げると、一般複層ガラスへの交換で約1万5千~3万円程度、Low-E複層ガラスへの交換で約2万5千~8万円程度、アルゴンガス入り複層ガラスへの交換でで約5万~10万円程度が相場となります。

#2:サッシ(窓枠)

窓ガラスだけでなく、サッシ(窓枠)の交換も合わせて行うことでさらに断熱効果をアップできます。

塩化ビニール樹脂の素材を用いた樹脂サッシやアルミ樹脂複合サッシは、断熱性能だけでなく、気密性・防音性・結露防止効果も大幅に向上できるため、寒さ・暑さの厳しい地域の住宅におすすめです。

サッシには主に2つの種類があり、断熱性能は樹脂サッシのほうが高くなります。

・樹脂サッシ:サッシ部分に樹脂を使ったサッシ
・アルミ樹脂複合サッシ:サッシの外側にアルミ、内側に樹脂を組み合わせて作られたサッシ

サッシを窓ごと交換する場合の費用相場は、樹脂サッシが25万~60万円程度、アルミ樹脂複合サッシが5万〜35万円程度となります。

窓ガラスやサッシの断熱リノベーションの費用は、窓のサイズ・種類・性能、施工内容(ガラスのみ交換 or サッシごと交換)によって大きく変動するため、予算や目的や設置場所にあわせて選ぶことでコストを抑えつつ効率よく断熱効果を高めることができます。

#3:内窓(二重窓)

また、既存の窓ガラスやサッシはそのままにして、窓枠に内窓(二重窓)を設置する断熱方法もあります。

この場合の費用相場は、1か所あたり2万〜10万円程度です。

複層ガラス・サッシ、内窓に変更すると効率よく断熱性能を上げられるだけでなく、窓の表面温度を室温に近づけることで結露を防止でき、建物や住む人の健康に与える効果もかなり大きくなります。

また、窓の断熱リノベーションは工期も比較的短く、住みながらの施工できるため、建物の断熱効果を短期・効果的に高めるなら窓の断熱化を優先的におこなうのがおすすめです。

(5)外壁・屋根

建物に全体的に断熱リノベーションを施すなら、外壁・屋根に特殊なセラミック粒子などを配合して熱の伝わりを抑える機能を持たせた断熱塗料を塗装する断熱リノベーションがおすすめです。

断熱性・遮熱性・防音性などの効果がある上に、高耐久塗膜により雨や湿気による漏水やカビ発生を防ぐ効果も期待できます。

外壁・屋根の断熱リノベーションは大がかりな工事となるため、費用も30㎡の広さで95万~200万円程度、工期も1~4週間かかります。

屋根の断熱リノベーションの工法として、他にも屋根材の下に断熱材を施工する方法(屋根面断熱)や屋根裏や屋根の裏側にウレタンフォームを吹き付ける方法(吹付けウレタン断熱)もあります。

屋根面断熱は、屋根材を一度剥がしてから断熱材を入れ、再度屋根材を設置し直すなど手間や時間がかかるため、費用は40万円~80万円程度、工期は3〜7日程度、吹付けウレタン断熱は約24万〜45万円、工期は1~2日程度となります。

屋根の断熱リノベーションは屋根からの外気の伝わりを効果的に防ぐことができる上に、防水・耐久性の補強にもなるため、雨漏り等が気になる方はぜひ実施しましょう。

4.断熱リノベーションの費用を抑える3つのコツ

最後に、断熱リノベーションの効果を最大限にしつつ、実質負担を大きく減らせるコツを解説します。

・国や地方自治体の補助制度を利用する
・優先的に断熱したい場所に施工する
・他のリノベーションと同時に行う

(1)国や地方自治体の補助制度を利用する

断熱リノベーションには国や地方自治体による補助金を設けられており、これらを活用することで断熱リノベーション費用の実質負担額を軽減し、快適で省エネな住環境を実現することが可能です。

断熱リノベーションで利用できる国の補助制度には次のものがあります。

国の補助制度補助対象補助金額期間
先進的窓リノベ事業・ガラス交換
・内窓設置
・外窓交換(カバー工法・はつり工法)
・ドア交換(カバー工法)
・ドア交換(はつり工法)
・上限200万円/戸
・費用の2分の1にあたる金額
・2025年3月31日~12月31日まで
・2026年予算上限(100%)に達し次第、交付申請の受付を終了するので早めの申請がおすすめ
既存住宅の断熱リフォーム支援事業・高性能建材(断熱材・窓・ガラス・玄関ドア)を用いた断熱リフォーム
・日常生活の中心となり家族全員の在室時間がもっとも高い「居間」を中心に高性能建材(窓)を用いた断熱リフォーム
・補助対象経費の3分の1以内
【戸建住宅】
・高性能建材を用いた改修:120万円
・住戸家庭用蓄電システム:20万円
・家庭用蓄熱設備:20万円
・熱交換型換気設備等:5万円
・EV充電設備:5万円
【集合住宅】
・高性能建材を用いた改修:15万円
・熱交換型換気設備等:5万円(個別改修のみ)
・共用部のLED照明(集合住宅全体):8,000円/カ所
2025年2月17日~12月19日まで
子育てグリーン住宅支援事業【すべての世帯】
・ GX志向型住宅
【子育て世帯・若者夫婦世帯】
・長期優良住宅
・ZEH水準住宅
【すべての世帯】
・160万円/戸
【子育て世帯・若者夫婦世帯】
・40万~100万円/戸
2025年3月31日~12月31日まで

国だけでなく、お住まいの地方自治体でも断熱リノベーションに補助金が出るケースもあるので確認を。

また、補助金の申請は施工業者が代行するので対応業者に事前相談をしておきましょう。

さらに詳しく知りたい方は次の記事もご覧ください。

住宅省エネ2025キャンペーンとは?補助金額や条件を詳しく解説

(2)優先的に断熱したい場所に施工する

断熱リノベーションの費用を抑えるなら、必要な場所や優先すべき場所に断熱施工箇所を限定するのも1つの方法です。

家全体に断熱リノベーションを行うと費用も高額になってしまいますが、リビングや寝室、子供部屋など優先的に断熱したい場所や、夏や冬などに特に室温が厳しい部屋など予算にあわせて施工することでコストダウンが可能です。

断熱効果の高さで選ぶなら、優先的に窓の断熱リノベーションを行いましょう。

二重窓や樹脂サッシ、内窓など断熱性の高い窓や、高断熱ドアにすることから始めるとコストを抑えつつ快適な住環境を手に入れることができます。

それでも断熱効果が不十分であれば、次に壁や床、屋根などの断熱リノベーションに取り組むと良いでしょう。

(3)他のリノベーションと同時に行う

断熱リノベーションは、単独で行うよりも、他のリノベーションを行う際に同時に行う「ついでに断熱」でコスト削減を実現できます。

キッチンや浴室などの水回り、内装リフォームなど壁や床に手を加えるタイミングで断熱材を入れたり、外壁の塗装をするタイミングで断熱塗料を併用するなど、施工の手間や足場代を一度にまとめれば費用を大幅に抑えることができます。

断熱リノベーションはFINDで

断熱リノベーションは、室内の快適性・省エネ・建物寿命の向上に効果的であるだけでなく、資産価値の向上や防音効果の向上など様々なメリットも得られるリノベーションです。

断熱リノベーションの施工範囲が広くなると費用も高額になりがちですが、補助金利用やタイミングなど方法次第で費用を抑えてお財布にも優しく実施することが可能です。

FINDは神奈川県川崎市に本社を構える、リノベーション、リフォーム、不動産売買仲介、空間デザイン、ファイナンシャルプランニング、ホームインスペクションまで行うリノベーション会社です。

FINDではその家に暮らす人がオールシーズン快適に過ごせるように、断熱効果に加えて生活スタイルや動線も踏まえて使いやすくて便利なリノベーションを提案しています。

経験豊富なプランナーがチームとなって人が満足できる家作りを行っていくため、安心してお任せください。

海老澤 知絵

ライフディレクション事業部 設計チーム / 一級建築士 / 既存住宅状況調査技術者