COLUMNコラム

マンションの空き家におけるリスクとは?対策方法も解説

総務省が公表している「令和5年住宅・土地統計調査住宅数概数集計(速報集計)結果 」によると、令和5年時点における国内の空き家の総数は、過去最多の900万戸となっています。

空き家というと、戸建て住宅をイメージしがちですが、実際は国内の空き家のうち、半数以上がマンションやアパートです。

上記のことからも、近年日本のマンションにおける空き家問題は深刻ということが分かります。

そこで、本記事ではマンションの空き家におけるリスクや、対策方法について解説します。


目次

1.空き家の定義とは

日本における空き家の定義は以下の通りです。

建築物又はこれに附属する工作物であって、居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)のこと

上記の中であっても、国や地方公共団体が所有・管理するものは空き家に含まれていません。

基本的には民間で所持している『1年以上、居住その他の使用がされていない状態』の物件が、空き家となります。

参照:国土交通省『空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針』

2.マンションの空き家はどのくらい?

総務省の「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」の結果によると、国内の空き家8,791,100戸のうちマンションやアパートは4,926,400戸となっていました。

空き家となる住宅の半数以上は共同住宅であるため、日本のマンションの空き家問題は深刻ということがわかります。

実家の相続、転居や移住で住む人が居なくなってしまったマンションなど、空き家になる原因はさまざまです。

空き家を放置しているとどのようなリスクがあるのか、対策はどうするべきかを以下で詳しく紹介していきます。

3.マンションの空き家のリスクとは

マンションの空き家リスクには、以下のものがあります。

・住宅設備の劣化
・毎月(または毎年)の支払い負担
・空き巣問題

順に説明していきます。

(1)住宅設備の劣化

一般的に人が暮らしていない物件は住宅設備の劣化が進んでしまうといわれています。

その理由として、以下のことが挙げられます。

・換気が不足するから
・ガスや水道を使わない時間が長いと、給排水管・ガス管の内側に付着していたヘドロ、異物の乾燥や硬化が起こり、劣化する
・敷地内(バルコニー)などに鳥のフンがつき悪臭が発生するケースもある

このように、使われない設備、手入れのされない室内は著しく劣化をしてしまいます。

また、実は鉄筋コンクリート造のマンションでもシロアリが発生する場合もあります。

段ボールや木材を放置していると、シロアリを寄せ付ける原因になり、知らず知らずのうちに柱などにも被害が到達してしまうこともあるそうです。

空き家の住宅設備の劣化は深刻な問題でもあるため、そのまま物件を放置してしまうのはリスクが高く、避けるべきといえます。

(2)毎月(または毎年)の支払い負担

マンションの空き家リスクの中には、物件を保有したままにしていると毎月(または毎年)の支払い負担が重荷になってしまうことが挙げられます。

当たり前ですが、住んでいないマンションでも一室を保有していれば、毎月管理費・修繕積立金を支払う義務があります。

また、年1回は固定資産税も納めなければいけないため、負担は大きく、物件の劣化リスクなども含めると空き家を抱えることがおすすめとは言えません。

とはいえ、両親からの相続で思い入れがあったり、使ってないものを置くスペースとして活用していたりと、なかなか売却に踏み切れない、という方も多くいます。

特に、築年数が古い物件ほど毎月の管理費は高くなってしまう傾向にあるため、一度年間の支払額を計算し、空き家をどうするか決める判断材料にしてみてください。

(3)空き巣問題

マンションの空き家リスクには、『空き巣問題』も考えられます。

長く人の出入りがない空き家は空き巣に狙われやすく、家具などを取られてしまうこともあります。

特に、外から侵入しやすい窓がある一室や人通りが多くない場所にあるマンションの空き家は危険です。

また、それどころか、不審者などに不法占拠されたり、ゴミを不法投棄されたり、犯罪の取引場所となってしまう可能性もあるのです。

対策をとりながら、それでも心配な場合は売却なども検討しましょう。

4.空き家リスクへの対策方法は?

マンションの空き家リスクへの対策方法は、以下の通りです。

・賃貸物件として貸し出す
・空き家管理業者に依頼
・思い切って売却する

順に説明します。

(1)賃貸物件として貸し出す

マンション空室のリスク対策として、賃貸物件として貸し出してしまう方法があります。

賃貸物件として貸し出すメリット・デメリットは以下の通りです。

メリットデメリット
・管理費などの費用を家賃収入でカバーできる
・人が住むことで設備の劣化を防げる
・家賃収入は不動産所得になるため、固定資産税や管理費などは経費にできる
・住宅ローンを契約している場合は、契約違反になるケースもある
・契約期間によっては、売却したい時にできない可能性もある

住宅ローンでは、本人またはその家族が住むことを貸付の条件にしているケースもあるため、賃貸として貸し出しを考えた際には、金融機関への相談が必要です。

賃貸として家賃収入を得る場合は、金融機関によっては住宅ローンから不動産投資用のローンに変更を求められるケースもあります。

また、何年後かに売却を考えている際には、賃貸借契約の種類を『定期借家契約(物件に住める期間が決められている契約)』にしておきましょう。

(2)空き家管理業者に依頼

空き家をこまめに管理できず、設備の劣化などが不安な場合は『空き家管理業者』に依頼するのも一つの方法です。

空き家管理業者とは、月に1回程度物件を訪れ、掃除や郵便物の確認、目視での建物点検、換気、雨漏りなどの不具合はないかを確認してくれるサービスです。

会社によって対応できる内容には違いがあるものの、管理状況を毎月報告してくれるためリスクを減らすことが期待できますよ。

(3)思い切って売却する

空き家リスクにお困りの方は、思い切って売却するのも検討すべきかもしれません。

空き家は、管理の手間などがかかり、放置すればするほどリスクも高くなってしまいます。

特に、手入れをしていない物件は資産価値が下がりやすいため、早めの売却をすることで損を減らすことも期待できるのです。

ただし、思い入のある物件では、なかなか売却に踏み切れないですよね。

将来的に損をしないためにも、早めに状況を整理しながら「今ならいくらで売れるのか?」という点だけでも確認しておくのがおすすめです。

5.マンションの空き家を抱える人は資産価値を落とさないように注意

上記でも説明しましたが、人の出入れがない室内は換気などができず資産価値が下がる一方です。

これからマンションの空き家の売却を考えている方は、定期的に訪問し、家の状態をなるべく保つことを意識しておきましょう。

その際、すべての部屋の窓を開けるだけではなく、クローゼットや各部屋のドア、食器棚など扉付きの棚などからも湿気を逃すようにするのがポイントです。

また、蛇口を開放して水回り(キッチン・洗面台)の通水を行い、トイレも流しておくなど対策をしましょう。

相続をした物件でも売却しない場合は放置せず、定期的に訪問しておくのがおすすめですよ。

6.国が行っている施策3選

国が行っている空き家に対する施策は以下のものがあります。

・安心R住宅制度
・管理計画認定制度
・長期優良住宅認定制度

それぞれ詳しく解説していきます。

(1)安心R住宅制度

安心R住宅制度とは、以下の条件を満たす中古住宅の広告に『安心R住宅』のロゴマークを付与する制度です。

安心R住宅の条件は以下の通りです。

・耐震性等の基礎的な品質を備えている
・リフォームを実施済み又はリフォーム提案が付いている
・点検記録等の保管状況について情報提供が行われる
・インスペクション(建物状況調査等)が行われた住宅

これは、中古住宅市場の活性化を目指すことを目的としている制度で、新耐震基準等に適合し、インスペクションの結果、構造上の不具合がないことが保証されます。

ただし、将来にわたって地盤の不同沈下や地震後の液状化について保証するものではなく、あくまで現状の評価となります。

参照:国土交通省『安心R住宅』

(2)管理計画認定制度

管理計画認定制度とは、一定基準を満たした管理計画を持つマンションが地方自治体から認定を受けられる制度です。

この制度では、管理状況を可視化でき、資産価値を維持することが期待できます。

マンションの管理状況は、住む人や売却する人にとっても重要なものです。

管理状態のいいマンションは資産価値が落ちにくく、暮らしやすい傾向にあるため、管理計画認定制度を取得しているかも確認しておくとのがおすすめです。

参照:国土交通省『管理計画認定制度のあり方について』

(3)長期優良住宅認定制度

長期優良住宅認定制度とは、その名の通り長期にわたって良好な状態で使用できる、優良な住宅を対象とした認定制度です。

この制度の認定基準は以下の通りです。

・住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられている
・住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有する
・地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものである
・維持保全計画が適切なものである
・自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものである

簡単に言ってしまうと、長期優良住宅認定制度はいい住宅を建てて長く大切に使っていくという目的で設定されています。

中古市場の活性化も期待できるため、空室リスクにお悩みの方で売却を検討している方はチェックしてみてください。

参照:国土交通省『長期優良住宅』

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海老澤 知絵

ライフディレクション事業部 設計チーム / 一級建築士 / 既存住宅状況調査技術者